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「進化と人間行動2008」の感想 (14 Oct, 2008)

学生から提出してもらった「出席カード」(大きい方) に書かれていた感想・質問・苦情から。

赤い文字が見にくい、進行が速くてノートが取れない

これらの苦情、要望がいくつかあった。スライドの色についてはすぐに改善できる。進行の速さについては「ちょうどよい」という意見も複数あり、調整が必要。学生にはもっと効率的なノートテイクを要求する。教科書に書いてあることなら教科書に赤線を引けばよい。

>の意味が分からない

「→」の代用として使っている。

手元が暗い

これは僕もどうにかならないかと思っているが、使っている教室の仕様がウンコなため、「教室の一部分だけ照明を落とす」という当たり前のことができない。

「今日はセクシュアルな内容があるので苦手な人は注意」と一言言ってほしい

進化心理学の話はほとんどがセックスの話。なので、「この授業では毎回のようにセクシュアルな内容があります。苦手な人は履修をやめたほうがいいかもしれません」。一応表現には気を配っている (実は結構たいへん!)。

男の方がいいと思った、など

そんなことはない。女が子育てしている間に男は浮気をしているかもしれないが、男が養っている子どもはその男の真の子どもではないかもしれない。それに浮気がばれた男がどれだけひどい目に遭うかは、だいたい想像ができよう。男はそのリスクを背負って浮気をしているのだ。進化心理学における性淘汰の話のうまみは、このようなオスとメスの駆け引きにある。

女性は子どもを産んだり男性の性欲を満たすためにいる気がして気持ちが萎えた

これまた勘違い。女性はどんな男性が自分を裏切らずに子どもを養ってくれるか見極める能力を発達させている。従って、基本的に不誠実な男はもてないし、相手を選ぶのは女性の側になる。男性はむしろ選ばれる側で、男性から見ると相手を選べる女性はうらやましい、ということになる。進化的には男女は全く対等の関係である。

デリケートな問題をすべて論理的に説明されるので困惑した

確かに文化的な規制のかかりやすい領域ではある。けれども、人間の行動には必ず道理があり、従っている原理がある。その原理を生物学的な見地から明らかにするのが人間行動進化学 (あるいは進化心理学)。その原理がわれわれの日常的な理解と乖離していることも少なくない。ここらへんのズレを楽しむのが、この講義をおもしろく聴くコツ!

「進化と人間行動2008」資料

広島修道大学の教養講義「進化と人間行動」(2008年後期) 履修者のみなさんへ

本日の講義「進化と人間行動」でアナウンスした「進化と人間行動」のスライドPDFファイルはhttp://ns1.shudo-u.ac.jp/~nakanisi/EHB2008/にアップロードしました。各自で確認しておいてください。

ファイルを開くためのパスワードについてはリンク先のURLにのせてありますが、あのヒントで分からない人は次回の講義まで待っていてください。講義内容についての質問等はこちらのブログエントリーのコメント欄でも受け付けます。匿名/偽名でも構いませんので、どうぞ。

浮気性を抑制するホルモン

少し古い記事で恐縮だが、「浮気性の夫に「バソプレッシン」をどうぞ」を読んでほしい。ハタネズミの浮気性がバソプレッシンというホルモンによって左右されるという内容だ。バソプレッシンは社会記憶と関係していると言われている。バソプレッシン受容体をたくさん持っているプレイリーハタネズミは、性行為をした相手をよく覚えているということが分かっている。

“マイホームパパ”のプレイリーハタネズミは、バソプレッシン受容体をたくさん持っているため、性行為をした相手をよく覚えている。そして、その相手が再び目の前に出てきた際には、「この娘としたんだ」という深い感慨を持つにちがいない (山元, 2006)。

しかも、山元によれば、ヒトのバソプレッシン受容体の多少には個人差がある。この個人差は遺伝子多型であり、生まれつき遺伝的な個人差があるということである。さらに、この遺伝子多型は自閉症のリスクとも関係するという。つまり、生まれつき浮気性な男とそうでない男が存在するということだ。結婚前に相手のバソプレッシン受容体遺伝子の遺伝子多型を調べることが当たり前になったら、どうしよう?
山元大輔  (2006).  心と遺伝子 中公新書クラレ

難題

大学の教員をやっているとマスコミからコメントを求められることがある。向こうは心理学の専門家でもないし、心理学者がどういう存在かということを知らないので、(特に社会心理学者は!) 何でも屋的な存在として取材要請をしてくる。学内の総合企画課という広報担当の部署がこの手の取材依頼の取り次ぎをすることになっていて、そこからはいつも難題が舞い込んでくる。
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大物は若い頃から大物なのだ

日本心理学会の大会は金曜日の朝からはじまる。はじめから出るためには木曜に広島を出る必要があるけれど、直行便はJALが1便、ANAが1便の計2便しかない。しかも、木曜日は午後から教授会 (残念なことに本学を含む多くの大学では、教授だけではなく、僕のような准教授や講師といったより下っ端の教員もこの不毛な会議に出席する義務がある。僕みたいなのが出席するのは畏れ多いので、参加資格を「教授」以上にしていただきたいのだが、いかがなものか)、教授会の後のFD研修会 (Faculty Developmentの略。学部の教育改善に関する研修会)、さらに研究科委員会をこなした後に出発する必要があった。
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日本心理学会第72回大会 (於北大)

明日から北大で日本心理学会第72回大会が開催される。「日本心理学会」はもちろん、日本で最も権威ある心理学の学会なのだが、一度も発表をしたことがない。今回も発表はない。発表が基本的にポスターというのが気に入らないということと、社会心理学者の多くは発表を日本社会心理学会や日本グループ・ダイナミックス学会で行っているということがその理由 (そんなことを言うならう小講演をやればいいのだが)。
基礎系の人が僕の発表を聴いておもしろがるとは思えないし、僕が知覚心理学や臨床心理学の話を聴いてその意義を理解できるとは思えない。
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