「心理学概論I 2013」の感想 (4 July, 2013)

学生から提出してもらった「出席カード」(大きい方) に書かれていた感想・質問・苦情から。

男の嫉妬は、仕方の無いことだと授業を通して分かりましたが、女も嫉妬するのは、なんでですか?

「仕方ない」なんてことは全然ないよ。束縛するような男がいてそれがいやだったら抵抗しないと。もし、女性が全く嫉妬しなかったら、どうなると思う? 男は浮気しまくりよね。そういう女性は子孫を残しやすいか、残しにくいか?

父性の不確実性とはどういう意味かよく分かりません。

「誰が本当の父親か」が分からないということ。

150人も覚えられるものなんですね。同じ専攻の人でさえ全く覚えられていないのにどういうことなんでしょう。

同じ村で共同生活していたら、150人なんて覚えられるんじゃないかな?

全く血はつながってないが親として育てられた子の場合でも血縁度は本当の親と一緒なのかなと思いました。

いやいやいや、そんなわけないよね? 「血はつながってない」んだから。

(利他行動) ある意味利己的な行動とも言えると私は考えます。

まさにそういう話が利他行動の研究ではたくさんある。

自己犠牲行動と利他的行動の違いは結局どのようなものだったのか

あの文脈では同じことです。コストをかけて、他者に利益を与える行動と定義される。

授業が楽しいので、大学に入って全く眠くならなくなりました。

全員そうなってくれるといいんだけど、それはこちらの力不足もあってなかなか難しいんだよね。これからもがんばりましょうー。

最近テレビで17年ゼミについて見た中で、触れられても逃げないのは一匹死んでも他に多くいるからだと言っていました。違和感を感じましたが、本当なのでしょうか。あと、無理ゲーの意味が分かりません……。

必死で身を守ろうとするかどうか (身を守る方に進化してきたか) ということは、死によるリスクがどのくらい高いかに依存するだろうね。自分と血縁の近い者がたくさんいれば、確かに身を守る方にかけるコストを抑えたほうがいいのかもしれない。程度問題だけど。「無理ゲー」というのは「クリアするのが無理なくらい難しいゲーム」のこと。

子殺しの率が6〜8歳の養子になると減少するのでしょうか。

子どもの養育にコストがかからなくなってくると、子殺し率は激減するね。0歳児が一番危険。

実子ではない分愛情もなく殺せてしまうというのは理解できた。

気をつけないといけないのは、ほとんどの継子は愛情を持って育てられてきちんと大きくなるということ。これは要注意。血がつながっていなくても、自分になつく子どもというのはかわいいものだよ。

片親が血のつながっていない京大でも同じようにダメなのでしょうか?

もちろん両親とも同じ方がリスクは高いけど、片親だけでも同じであれば、全くの他人よりもリスクが高いはず (どのくらいかは分からない)。

学習支援センターの講座、うけてみようと思いました。

親切なひとが多いからぜひ行ってみるといいね。あそこは新しい部署ということもあって、とてもよい仕事をしていると思う。

嫉妬する対象は自分がうらやましい等と思っている対象のことだったはずなので、「束縛」という言葉と並べるならこの分だと少しおかしいのでは……。

2つ意味があって、1つはあなたが書いてくれたような意味で、もう1つの意味は「人の愛情が他に向けられるのを憎む事。また、その気持ち。特に、男女間の愛情についていう。やきもち。悋気 (りんき)」と辞書にあります (『大辞泉第2版』)。嫉妬の話は「進化と人間行動」でもっと詳しくやるので、ぜひ2年生以上になったら履修してみてください。

「子殺し」の話にはとてもびっくりしました!! 普段ケンカばっかりしているので殺されてしまったらどうしようと思いました……。

全体から見ると滅多にないんだから大丈夫だよ。あなたの親御さんは、あなたが考えているよりずっとあなたのことを好きだと思うよ。子どもはかわいいものなのだ、けんかしてもね。

(利他的行動の表について) 物質的な損なのか、イメージに対する損なのかによってまた面白い実験になるのではないかと思いました。

そういう視点は大事にしてね。そういう直感から研究がスタートするのだ。

また「似た者夫婦」という言葉があるように自分に似た顔の人を好むひとと、自分と真逆のタイプを好む人がいますが、これにも遺伝子が関係するのでしょうか。

どうだろう。そこでの類似度がどのくらい血縁度の類似度と近いかによるよね。似た顔というより、その場合考え方が似ているとかそういうことなんじゃないだろうか。「真逆のタイプ」の場合は、社会心理学では「相補性の原理」といって、お互いに補いあえる関係がうまくいくとか言われる。

男子大学生のにおいを女子大学生がかいで決めるとありますが、逆のパターンというのはないんですか?

知らないなあ。基本的に選ぶのはメス側だから、そういう研究になるんだと思う。

日本では養子と実子の子殺しの比率はどうなっているのですか。

日本でも比率では養子の方が多い。でも養子の数は圧倒的に少ないので、数としては自分の親に殺される例が圧倒的に多い。

イフォークの話は納得できなかった。生物学的には正しくても感情に反してしたくない生活をするのは個人の人生を考えると行わない方が良いと思った。

でも、それは「日本にいるあなたの感情」でしょう? イフォークのひとびとにとってはそれが感情的にもあっているのかもよ。そういうのが当たり前の社会なんだから。こういう話をする場合は、いかに自分の文化を相対化して考えられるかが大事だと思う。自分たちがいいと思うことを他の文化圏のひとたちがいいと思うとは限らないということ。

自分も出産予定日より3ヶ月早く産まれた未熟児だったから、先生の子どもの話を聞いてビックリした。

おお、なんと。それじゃあ1kg未満だったのかな。大きくなれて本当によかったねえ。

できればもう1度、包括適応度のところを聴きたいです。

時間があればやりましょう。

自分の父親は40半ば過ぎてるのに、全然無臭です。本当の父親じゃないのかなあ……(笑)。

加齢臭は個人差もあるからね。血縁度と加齢臭を気になる程度がどのくらい関係するのかは分からない。

先生が今まで見た中で驚く実験はありましたか?

男性がおしっこする時間がとなりに人がいる場合といない場合で変化するかどうかをミラーで視覚的に確認する実験というのを聞いたことがあるなあ。もちろんこれ同意も取らないでやるんだ。今では倫理的な問題でできないね。

私はお兄ちゃんが嫌いなのですが、どうしたら好きになれるでしょうか。

好きになったらまずいだろう。

人を殺せる意味がわかりません。

人殺しをしたひとも一瞬前までそうお思っていたのかも。

心理学実験は、やはり嫌な実験であるほど参加したら報酬は高くもらえるものなんですか?

そこらへんの負担は当然考えるよね。

先生が心理学を学ぼうと思ったきっかけは何ですか?

もともとは社会人類学をやる研究室にいたのだが、先生が転出してしまったのよね。それでとなりの研究室に社会心理学の先生がいたので、おもしろそうだからやってみようと思った。だから心理学というのは本格的にやり始めたのは大学3年生くらいからだったかなあ。それから自学でいろいろ勉強して、だからよく分かっていないことも多いし、基礎実験のことはほとんど知らない。自習には限界があるよ。

先生はなんとなく、津田大介が好きそうな気がします。

嫌いではないが、別に特別好きというわけでもないなあ。以前あるイベントにいったとき、すぐそばにいて、ああこのひとかと思った。

(特攻をするのは) 先生は何だと思いますか?

それによって残った親族が得るものが多いとしたら……なんてことも考えるけれど、怖いねえ。

血縁者殺人のデータについて。東京のデータがとられた時期が、終戦直後・バブル崩壊という苦しい時期のものであり……

これ、正確に調べないといけないけれど、ちょっと手元にデータがない。調べてみて!

あの島は「ニューギニア島」です。

そうそう、出てこないときは授業中に突っ込んでよ。

このような事件が起きるたびに継母かなと感じてしまう今日この頃です。

継母とか継父が育てている例はそもそも少ないので、数としては圧倒的に実の父母なんだよ。

私は血液型を知りません。出産時のこともあまり聞いたことありません。もしかしたら親が違うのかなと思いました。

献血したら血液型は分かるんじゃないかな。

日本はいとこと結婚はできないが

「できる」という話を授業でしたと思うなあ。

英単語もテストに出るのですか?

英単語は出ない。

先生は他の心理の学者と考えが異なることがあるのですか。そういう時はどうするのですか。話し合ってどちらかが納得するのですか。

話し合ったりはしないよね。議論をしてどちらかが正しい (あるいはどちらも間違えている) ことが分かることもあるし、それでも決着がつかないこともある (どういう議論の仕方をするかについては基本的に合意が出来ているので、けんかになったりはしない)。最終的には実験データで決着をつければいいと思うね。学者なんてお互いがやっていることを批判しながら学問を進展させていくものなので、そういうことはしょっちゅうだよ。

テレビで見たんですけど、娘が父親の匂いと同じような人と結婚する確率が高いとやっていたんですが、これも表現型マッチングですか?

これ、よく分からないよね。むしろ血縁の近い指標なのだったら、違う匂いの方が好みそうなものだけど、別のメカニズムが働いているのか (この手の話を以前誰かと話した覚えがあるんだけど、忘れてしまった)。

女性が束縛をするのは何故なのでしょうか。

自分のところに資源を持って来てもらう必要があるから。もちろんそれは近接因ではないけどね (意識的にそう思っているんじゃなくて、進化的な説明ということ)。

まさか心理学の授業で「意地悪行動」なんていうかわいらしい言葉が出てくるとは思っていませんでした。

かわいらしくない言い方だと「スパイト行動」と言います。

イフォークででは、包括適応度など関係無しで自然に母方の伯父と暮らす文化ができたのですか?

いやいや、包括適応度の基準に従っているんだよ。