教育にもカルテを

教育にもカルテがあれば便利だと思っていた。学生を指導する際、その学生がこれまでどんな授業を受け、どのような出席状況で、どんな成績を取ってきたか。また、その学生はAO入試で入学したのか、それとも一般入試あるいはセンター利用入試で入ってきたのか。これまで、単位僅少の対象となってチューターの先生に指導されたことがあるか。あるとすればどのような指導をされてきたのか。こういう情報が一元化されていれば、ものすごく便利だ。もちろん、入試に関する情報は入学センターが、学業成績やこれまでのチューターによる指導履歴は教務課が、それぞれ持っており、教員の照会に応じてくれる。しかし、知りたいのは特定の学生に関する情報だけなのに、複数の部署に問い合わせなければならない。多くの場合、電子メイルや電話で問い合わせなければならず、結構面倒だ。

教育熱心な教員なら、そういった面倒があっても情報を集めようとするだろう。ところが、僕のような、教育自体にはそれほど関心もなく、教員免許ももちろんもたないずぼらな教員は途中で諦めてしまう。いかにも、面倒だ。

もし、大学にも学生一人一人に対応したカルテがあったらどんなに便利だろう。そして、そのカルテはコンピューターでログインすれば即座に見ることができるのだ。そこには学生の連絡先も登録されていて、面接の予約も簡単にできる。推薦入試で入ってきた学生なら、入学前学習の履歴も見られるし、学習支援センターが行っているような補習授業を受けた履歴も知ることができる。夢のようなシステムではないか。こういう「カルテ」のことを、どうやら「ポートフォリオ」というらしい (最初は、資産の分散投資のことかと思った)。

昨年度から、心理学専攻ではMoodleというオープンソースのE-Learningシステムを導入して運用をしている (あの奥村晴彦氏が関わっていると言えばぴんとくるひともいるに違いない。『C言語による最新アルゴリズム事典』などには学生時代おおいにお世話になった)。1・2年生の実習から、3・4年生のゼミに至るまで、比較的短期間で幅広く展開することに成功していると思う。Moodleと親和性の高いポートフォリオのシステムにMaharaというのがあるそうだ。これを使えば上で書いたようなことが全て実現できるのかどうかは分からないが、ぜひ使ってみたい。

Moodleも、Maharaのようなポートフォリオも、なんとか全学的に展開していければと勝手に夢を描いている。現時点では心理学専攻の学生しかMoodleを使うことができておらず、従って心理学専攻以外の学生も履修する授業では使えない。いったんE-Learningを使いだすと、資料の配布を印刷物で行うなんてそんな無駄なことはしたくない。履修者全体にすぐに連絡できないことが非常に不便に感じてしまう。成績処理で、わざわざ紙に書かれた数字をコンピュータに打ち直すなんて、原始人みたいだと思ってしまう。実際には、全学的導入にあたって障害は多いが、なんとかしたいものだ。