「心理学概論I 2009」の感想 (14 May, 2009)

学生から提出してもらった「出席カード」(大きい方) に書かれていた感想・質問・苦情から。

人様の巣に勝手に卵を産んで、孵化した子どもは周りの卵を棄ててしまう、そんな托卵鳥カッコウの評判が悪い。でも、カッコウを責めないでほしい。それが彼らが生き残るやり方なのだ。人間みたいに無駄に戦争で殺人したりしない分、彼らの方がよほど倫理的な存在だ。

チンパンジーでも、もっと学ばせたら、人間の様に、何かを作ったり出来る様になるのだろうか?

残念ながら (?) チンパンジーを人間と同じ様に育てるのは不可能。

「退化も進化の1つだ」と以前おっしゃっていましたが、「退化」という言葉を使うことは合わないのでしょうか?

全く使わないか、といえばそこらへんは微妙なところだが、「進化」にはそもそも方向などないのだから、僕の立場では、「退化なんてあり得ない」。

鳥がカッコウとわからずに育てつづけてしまうなら、他の鳥の数がカッコウによって減りつづけ、カッコウは増加しすぎる事態にはならないのだろうか?

他の鳥も100%騙されるわけではなく、少しでも巣に異常を感じるとその巣を放棄してしまうこともあるそうだ。なので、必ずしもカッコウの一人勝ちというわけではない。

チンパンジーが人間になることはないというのもびっくりした。

結構誤解しているひといるのね……。

蚊やゴキブリを殺していくとすばしっこくて逃げるタイプの遺伝子ばかりが残っていく結果になっていくと思いますが、この現象もたまたま (偶然) の結果殺されなかったことであり優れた遺伝子だけが残るということは起きないのでしょうか?

後半部分の日本語の意味が分からない。実際蚊やゴキブリはすばしっこくて、やっつけるのには骨が折れる。足の遅いゴキブリはすぐに退治されるので、当然、逃げ足の速いやつが増えてきただろう。すばしっこいゴキブリの方が敵に殺されにくかったから、結果的にそういうゴキブリが増えてきた。「優れた」とか「優れていない」とかそういうことではない (例えば、天敵のいない土地があったとしたら、そこでは足がいくら速くても意味がない)。

遺伝子の乗り物という言葉を聞いたら、本当にじゃあ人って何なんだろ? って思ってしまいました。怖いです。

人間は特別な存在じゃない。魂なんて存在しないし、他の動物の頂点に位置するわけでもない。だからといって統合されたパーソナリティがないというわけではないので、深く考えなければ何の問題もない。ほら「宇宙の果てってどこだろう?」と考えると眠れなくなるのといっしょで。

(カッコウの話) 遺伝子とかが他の鳥とまざってしまうのに

え? 遺伝子がまざる? 他の鳥の巣で育ったって、遺伝子はまざらないよ? 遺伝子がまざるのは、交配したとき。

カッコウは生まれ付き (ママ) に他の鳥を殺してしまうというのは恐かった。人間でなくてよかった。

カッコウはきっと、「戦争で何百万人も殺す人間と一緒にされたくない」と思っているだろうね。

カッコウが托卵するのはいつもオオヨシキリなんですか?

いいえ。

カッコウがそんな最低なトリだとは思ってなかった。

最低じゃないでしょ、別に。動物を食べるために飼って、殺して、肉にして、しかも「おなかいっぱい」とか言って残して棄てるような人間よりはマシでは?

今日の話の中で「進化≠進歩」で進化の中には退化も内包するということに疑問をもちました。似たような言葉で「発達」という言葉は成長も衰退も含んでいますが、「進化」は環境に適応するために成長したものだと捉えていたからです。

環境に「適応するため」だとしたら、前もって将来の環境が分かっていなければならない。少なくとも、次の世代の環境は。しかし、そんなことは知り得ない。ある遺伝子を持つ個体が増えるのは、ある時点 (t世代) において、その遺伝子が発現する行動傾向が環境に適していたから、というだけの話だ。産まれた子どもたちの世代 (t+1世代) においてもその行動傾向が適応的かどうかは分からない。従って、「適応するために成長」するというのは間違い。「適応していたからある遺伝子が増えた」というのが正しい。「適応するためにある遺伝子を増やした」というのは間違い。ここはしっかり理解しておこう。

ところで、次で先生の授業は最後らしいのでさみしいです。

……クビになるのかと思ったよ。S先生の授業も楽しいと思うので、悩み無用。