もし、これから購入するコンピュータが、USキーボードを選択できるものなら、絶対にUSキーボードにするべきだ。ノートブック型の場合にはLenovoのThinkPad (IBM部品センターでUSキーボードを部品として購入可能。IBM部品センターの連絡先は03-5445-0365、受付は土日祝を除く9:00-12:00 / 13:00-17:30) や過去のPower Bookなどを除いて容易にキーボードの交換ができないので、特に注意が必要。デスクトップ型の場合には、Apple Wireless Keyboard (US) やThinkPlus USBトラベルキーボード ウルトラナビ付 (英語) のようなテンキーのないタイプがおすすめ。
USキーボードの方がよい理由は以下の通り。
1. かな入力よりもローマ字入力
特に初心者はかな入力よりローマ字入力を覚えるべきだ。ローマ字入力はかな入力と比べて打鍵数が2倍になると勘違いしている人がいる。たしかに、「か」を入力する場合には、かな入力だと打鍵数は1だが、ローマ字入力だと ka と入力して2になる。しかし、「あいうえお」はローマ字入力でも打鍵数は1になるし、濁音や撥音の場合にはいずれの入力方式でも打鍵数は2になる。また、「きゃ」や「きゅ」などを入力する場合、 かな入力ではshiftの打鍵が必要で、しかもキーボードの一番奥まで指を伸ばす必要がある。こうした事実を踏まえると、ローマ字入力は、かな入力より平均して打鍵数は1.5倍程度多いだけと言われている (例えば、「キーボードを科学する。」には、約700文字前後の「天声人語」を様々な方式で入力させたデータが掲載されている。このページの性質から「親指シフト」形式が有利なデータとなっている可能性もあるが、 ローマ字入力はJIS方式 (かな入力) の1.46倍となってる。でも、僕がもともと「1.5倍」とした根拠の文献はまだ見つからない)。また、英語を入力する際にはどうせ英字の配列も覚えなければならないし、覚えるキーの数は英字の方が少ない。
JISキーボードでは、かながキートップに入力されているせいで、初心者が誤ってかな入力を試みてしまう危険がある。しかし、多くのOSではローマ字入力がデフォルト設定になっており、キートップに印字されているとおりに入力できない。余分なかな表記は混乱のもとだ。
しかし、どうしてもかな入力がに慣れている人はどうしたらよいか。十分にかな入力に習熟しているなら、キートップにかなが印字されていなくても、ブラインドタッチで問題なくかな入力ができるだろう。下で述べる様々な問題から、JISキーボードはとても使いにくいので、かな入力のプロフェッショナルの人でもUSキーボードを使った方がよい。もし、かなキーの位置を見ながらでなければ入力できないのであれば、それはかな入力に習熟していない証拠だから今からでもローマ字入力に切り替えたほうがいい。
2. ホームポジションの問題
キーボードのホームポジションは、両手の人差し指がFとJの位置になる。多くのキーボードでは、ここに立体のマークがついてある。これらのキーに人差し指を置いた状態だと、USキーボードの場合、左右の小指がそれぞれshiftキーを押せる位置に置かれる。ところが、JISキーボードの場合、右のshiftを押すのはたいへん。小指がつる。
3. 使用頻度の高いキーについて
JISキーボードでは、ほとんど使わない @ がshiftを押さずに打てる位置に鎮座している。場所がもったいない。一方、USの場合、この位置 (Pの右隣) には [ (日本語入力モードの場合「) というよく使う記号が配置されている。JISの場合、この括弧は @ の右に追いやられている。USだと ‘ がshiftなしで打てるが、JISの場合、shiftが必要。よく使う記号なのに (I’ll be back soon. とか、That’s all right. とか)。= キーもそうだ。JISの場合にはshiftが必要。こんなに使用頻度の高いキーなのに! JISキーボードでは、0 のshiftに何も割り当てられていないのももったいない。そのおかげで両括弧の位置がずれている。なんてことだ。MacBookの場合、JISだと右commandキーがないのもひどい。{ と }、[ と ] が隣同士に並んでいないのもいただけない。JISキーボードは不良品としか思えない。
returnキーはJISの方が縦に長いが、押しにくい位置にある。なぜかというと、USの場合、returnキーは横長で L から3つ目の位置にくる。ところが、JISの場合、P からは3つ目、L から4つ目の位置にreturnキーがあり、ホームポジションからかなり遠い。returnキーが縦長になっていることの利点は多分ない (わざわざreturnキーの奥側を押したりしないでしょ?)。
JISキーボードはスペースバーが短い。バーとは言えないくらいだ。右手の親指でスペースバーを打とうとすると、間違えて「変換」キーを押してしまう。これまたいらいらの原因だ。精神的によくない。
4. 不要なキー
「無変換」「変換」「カタカナ」「ひらがな」「半角/全角」キーは全く不要。なくても日本語入力には何一つ不自由しない。そんなものにスペースを奪われるのはたまらない。入力モードの切り替え (英語→日本語、日本語→英語)をする場合、Macの場合にはcommand + spaceでよいし、Windowsの場合には、Alt + ` でよい。また、Macでことえりを使う場合は、未確定の状態でcontrol + ; で英字に変換できる。確かに、「変換」キーなどのおかげで、JISキーボードの場合には1キーで入力モードを変更できるが、慣れればcommand + space (Alt + `) で不自由しないだろう (それに、慣れてくれば入力モードを変更する機会も減るはずだ)。
5. テンキーについて
テンキーはついていないほうがよい。ホームポジションに手を置いた場合、テンキーなどどうせ押せない。また、デスクトップ型の場合、マウスの位置が遠くなるのも不利である。肩こりの原因になる。伝票入力などの特殊な用途以外はテンキーは不要。数値だけのデータ入力をする場合には、外付けのテンキーをつけて済ますのがよいだろう。
6. MacBookの場合
僕の使っているMacBookの場合、JISキーだとスライドパッドの位置がおかしなことになる。ふつうにキーボードを使おうとすると、間違えてスライドパッドに触れる確率が高い絶妙に不便な位置になるのだ。Appleはこんなだめキーボードをデフォルトにはせずに、USキーボードをデフォルトにするべきだ。
7. 慣れの問題
JISキーボードの方が慣れているからよいのだ、という人はぜひUSキーボードを少しの間使ってみるべきだ。使いにくいキーボードに慣れることは幸せなことではない。JISキーボードを使っている人でも、少しの間USキーボードを使えばすぐに慣れる。「慣れているから」といっていつまでもホームポジションを覚えない自己流のタイピングをしているのは不幸であるのと同様、慣れているだけの理由でJISキーボードを使い続けるのは身体によくない。
8. controlキーの位置
USキーボードはcontrolキーの位置が気に入らないという人は多い。僕もcontrolキーは A の隣にあるべきだと思う。これはOSの機能で入れ替えが必要なので、(キートップの印字を気にしなければ) それだけでJISキーボードを選ぶ理由にはならない。
この文書について
この文章は、mixiにおけるMac関係のコミュニティの主にKusakabe氏の発言を中心にUSキーボードの利点をまとめたもの。
(第2版 7th October, 2008) mixiのMacユーザーコミュニティのトピック「雑誌編集用のノートパソコン (質問)」の>244氏のつっこみを受けて改稿。コメントありがとうございました。
※強調部 (strongタグ) は第2版で追加した部分、strikeタグ部分は削除した部分。
(第3版 13th October, 2008) mixiのMacユーザーコミュニティのトピック「悪いことは言いません。MacのキーボードはUS配列にしなさい。」において、Kusakabe氏より読みにくさの問題とタコなHTMLの問題を指摘されたので、コードを直して、見栄えをスタイルシートで調整した。親切すぎるKusakabeさんに感謝。まだ文自体があまりよくないので、今後も訂正予定。