前期末授業アンケートの結果 (2008年度)

毎年2回、本学の (だけではないが) 教員には学生からの授業アンケートの結果という評価がフィードバックされる。卒業論文や演習等の少人数クラスについてはおおむね評価が高く、学生達も満足しているようだ、と勘違いしかけたが。そうではない、かもしれない。少人数だから、教員の僕に遠慮して辛いコメントが書けないだけなのかもしれない (!)。そうだったら、ごめん、でも勘違いさせてください。
従って、フィードバックされて意味があるのは大教室で行われる講義の方である。僕の場合は「社会心理学」、「集団力学」、「心理学概論I」(の半分) がそれにあたる。
さて、評価項目は、まず授業科目の履修動機や履修の際に参考にした情報、出席率など学生本人の動機に関わる項目などがくる。このページにはこちらが読んであまりおもしろい情報はない。2枚目は、該当科目について、1ページ目のデータが「科目別分類」(学部ごとなどに分類される) や「受講者数別分類」 (授業人数で恣意的にいくつかのカテゴリに分けてある) の中でどういう位置にあるかという情報が出ているだけで、これもやはりおもしろくない。「履修の際に参考にしたものは何ですか」という質問項目に対して、「履修ガイダンス」と回答した比率が、当該科目では44.7%で、同じ「科目別分類」の平均が39.6%である、なんてことはあまり授業改善とは関係のない情報だ。

おもしろいのは3枚目以降。
「この授業について」の評価項目は以下の13項目からなる。いずれも5段階 (といっても、A: そう思う=5点、B: ややそう思う=4点、C: あまりそう思わない=2点、D: そう思わない=1点、で、等間隔ではないので、統計学的に平均を取る意味があるのかどうかはなはだ疑問ではある) で学生が評定する。

  1. 講義要項と授業内容が一致していた。
  2. 授業のねらいや学習目標は明確だった。
  3. 授業時間や授業回数はきちんと守られていた。
  4. 教材は授業内容の理解に役立った。
  5. 教員の声・話し方は聞き取りやすかった。
  6. 黒板や機器等の使用が適切だった。
  7. 課題(レポート等)の出し方が適切だった。
  8. 授業は分かりやすかった。
  9. 質問や発言を促し、それらに充分対応していた。
  10. 学生の反応や理解度をみながら授業が進められた。
  11. 学習意欲をかき立てられた。
  12. 教員の熱意を感じた。
  13. 授業は全体として満足した。

13番目の「授業は全体として満足した」が結局のところ、学生のその授業に対する評価の集約だと判断し、各講義について評価をチェックしていこう。
まずは人数のもっとも少ない (62名の履修者中47名が回答) 「集団力学」から。全ての学生が13番目の質問に「そう思う」か「ややそう思う」と回答してくれている。これほどよい評価をもらったのは多分初めてだ。そんなに遠慮して評価しなくていいのに。平均は4.8で、科目別平均の4.5、受講者数別平均の4.4を上回った (とはいえ、これらの平均も相当高いと思う。広島修道大学の講義は悪くない)。
自由記述はどうだろう。自由記述欄は「この授業でよかったところ」、「この授業で改善してほしいところ」、「その他感想」からなる。改善してほしいところには一切記述がない。これでは参考にしようがない。こんなことをされると担当者が「おれの授業は完璧だぜ」と勘違いして暴走しかねない。実に危険だ。「よかったところ」には「中西先生の授業好きです」とのコメントが。「の授業」がなかったらときめいたのに。とはいえ、「たのしかったです」なんて書かれると結構嬉しいね。ところが、「その他感想」には問題のあるコメントが。「もう集団力学(まだわからないが)も社会心理学もとってしまったのでさらに社会心理学系の講義をつくって下さい。受講します」なんて書いてある。後生だから、これ以上仕事を増やさないで!
次は「心理学概論I」。これは前半部分を僕、後半部分を発達心理学の先生が担当している科目である。前半は系統発生、後半は個体発生の話をするというのがねらいだ。この科目の「授業は全体として満足した」項目の平均値は4.5。履修者数93名 (回答者数73名) としては悪くはないだろう。「あまりそう思わない」と「そう思わない」が併せて3名しかいないので、おおむね学生達は満足していたと推測される。「前は、発達心理学にあまり興味がなかったけど、授業を受けて、興味を持てた」、「赤ちゃんのビデオ可愛かったです」などと、授業に満足している様子の自由記述も……って、進化の話がないじゃん! 改善してほしいところには、「もう少し授業中しゃべっている人を注意してください」とか、「もっと出席点を重視してほしいです」といった内容が上がっている。出席しただけで評価してもらおうだなんて、オリンピックじゃないんだから甘いよ! オリンピックは参加することが大変だから、「参加することに意義がある」んだ。
最後は「社会心理学」。履修者数は136名 (回答者数103名)。「授業は全体として満足した」の平均値は4.6で、これまた平均的な評価だ。やはり履修者数によってこの満足度が規定されるものと思われる (演習などではオール5に近い)。「よかったところ」には「鉄っちゃんとかわいいもの好きの話がおもしろかった」、「雑談」など授業とあまり関係のない与太話が人気なのが悲しい。「恋愛がおもしろかった」という記述もあったので、おそらく授業中に素敵な異性と出会えて、恋愛を楽しめのだろう。うらやましい限りだ。改善してほしいところには、声が聞き取りにくい、ビデオが見にくい (これは僕の責任じゃない!)、黒板の書き方が汚い、など比較的役に立ちそうな助言が書いてある。ありがたい。「休んだ人への救済がほしい」といった甘ったれた意見とか「黒板の文章の中に図の参照が書かれていないことがあったので気をつけてもらいたい」という上から目線が気になるコメントもあったが、参考にしよう。ただ、「この授業で改善してほしいところ」に「人間性」と一言書くのは勘弁して。授業評価で教員の人間性は改善されないよ!
#今田先生の記事 (前期末授業アンケートの結果「文化心理学」) にトラックバックさせていただきました。